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コリドラスの近代史(2) アクアライフ1982年1月号




専門誌のコリドラス特集号を通して、コリドラスを取り巻く空気感や諸事情を振り返る当企画。
今更歴史なんて、と仰る事なかれ。
愚者は経験に縛られ、賢者は歴史に学ぶのだ。
本日はその2回目。



話は40年前、1980年まで遡る。
アクアリウム専門誌の勢力図は、老舗のフィッシュマガジンに新興のアクアライフが挑むという構図になりつつあった。



新旧の対決が明らかになるつれ、アクアリウム専門誌は大きな変化を遂げる事になる。

コリドラスの近代史(1)で紹介したアクアライフの創刊号から第3号までをご覧になって、読者諸兄姉は微妙な違和感を感じなかっただろうか。
その違和感の源泉は、もしかすると誌面の構成なのではないかと推察する。
1970年代までのアクアアリウム専門誌は、巻頭にその号を代表する特集記事を持って来るというような記事構成をしていなかったのだ。
どちらかと言うと、フィールドレポートや繁殖事例など、旬な話題を各ジャンルから取り上げる傾向が強かったように思う。

それが、この頃から少しずつ変わって来たのだ。

競争は勝者と敗者を生むけれど、同時に新しい「何か」を生成する。
アクアリウム専門誌における「何か」は、魚種別に深掘りする「特集」だったのではないだろうか。
フィッシュマガジンとアクアライフのシェア争いが、結果として誌面の構成を根底から変えた。
これ以降、例えば1982年1月号と言えば「Corydoras102点一挙掲載の特集号」になったのだ。



それでは、アクアライフ初のコリドラス特集号を御紹介しよう。
以下、敬称を略す。

コリドラスを飼育している人であれば、この表紙をご覧になられた方は多いのではないだろうか。
アクアライフ1982年1月号
アクアライフ1982年1月号「特集チョビひげのマスコット・Corydoras102点一挙掲載」。
表紙には1980年に初めて輸入され、コリドラス界に衝撃を与えたバルバータスが選ばれた。



実は、この特集号が出版される二年前に、アクアライフはコリドラスの小特集を組んでいる。
アクアライフ1980年5月号-1
1980年5月号「特集 小型カラシンへの招待」。
既に特集号が企画されており、現在の形に近づいている事が分かる。



AQUA FEATUREの枠を使って「コリドラスの魅力」としてカラー4ページ、黒白5ページの小特集が掲載された。
アクアライフ1980年5月号-2
プンクタータス・・・ではない事は明らかだけれど、当時はこんな程度だったのだ。
お世辞にも充実した内容とは言い難い小特集だったけれど、1980年のコリドラスの立ち位置が分かって興味深い。
あくまでも、小型カラシンの「おまけ」だったのだ。
ここから、たった1年半で特集号を組まれるまでになったのだから、バルバータスという「スター」の存在の大きさが分かる。



間違いだらけの小特集だったけれど、次の記事は非常に面白かった。
アクアライフ1980年5月号-3
多紀保彦の筆になる「AQUA SCIENCE へそまがり熱帯魚学3」。
何故、コリドラスがこれほど多くの種類に分化したのかについて解説されているのだが、この内容は非常に興味深い。
進化とDNA量の関係について、これ以後、少なくとも一般には取り上げられていないのが不思議だ。
今回の主題ではないので、詳細は「古文書探訪(1)」を参照の事。
古文書探訪(1) 魚が語る地球の歴史



一方、同じ時期にフィッシュマガジンも2回に渡ってコリドラス特集を組んだ。
残念ながら、何度かの引っ越しでこの時の特集号は紛失してしまったから、現在は手元に無い。
当時、このフィッシュマガジンのコリドラス特集号に携わった土屋俊朗によると、川口泰弘(後に「コリコレ’86」を主幹した)が中心になって編集作業を行ったらしい。
コリドラスの種類を紹介するというより、微妙な個体差を「これでもか!」と掲載していて、どう見てもマニア向けの作りだった。
「川口さんらしい」と言える内容だったけれど、コリドラスの人気を一般に広める事は無かった。
マニア向けに過ぎる内容もあるかもしれないが、一番の要因はスターフィッシュの不在ではないかと思っている。



話をアクアライフ1982年1月号に戻すと、カラーページのトップもバルバータスが起用されている。
アクアライフ1982年1月号-2
コリドラス=水槽の掃除屋さんとされていた当時、1匹の小売価格が5000円というバルバータスは、もはや高級魚だった。
丁度この頃、某大学の生物学部で飼育されていた30cmほどのアジアアロワナ(Scleropages formosus)を10000円で譲り受けたと言えば、バルバータスの価格が想像し易いかもしれない。
日本がワシントン条約を批准し、輸入が困難になると言われていたアジアアロワナがコリドラス2匹と同額だったのだから、もはや「事件」だったのだ。



今ではスクレロミスタックス属に分類されるバルバータスだけれど、この特集号の記事でもコリドラス属ではないのではないかという問題提起がされている事には驚かされる。
アクアライフ1982年1月号-1
実際にスクレロミスタックス属に分類し直されるのは、この記事から30年も後の事なのだ。
ちなみに、この記事を書いていたのはアグアプロダクションを立ち上げる前の松坂實であったりする。(P33~P47「混迷状態の分類に挑戦する」)
賛否はあったけれど、魚類学者ではない一愛好家が、分類についての記事を書くのは容易な事ではないはずだ。
その中で、バルバータスに違和感を感じていたのは流石としか言いようが無い。



それにしても、図は本当に酷い・・・(涙)。
これじゃ分かんないよ、松坂さん。
アクアライフ1982年1月号-7
素人のイラストの域を出ない図は別にして、発表されたばかりのナイセン(Nijssen)らの研究論文をベースにするなど、非常に意欲的な記事ではあった。
コリドラスを5つのグループ(アエネウス、エレガンス、バルバータス、アクトゥス、プンクタートゥス)に分ける考え方を一般に広めたのも、この記事が初めてだったはずだ。



それでは、この特集号に掲載されていたコリドラスをいくつか御紹介しよう。

珍コリと言えばコレ。
アクアライフ1982年1月号-5
エベリナエは1970年代から珍コリとして認知された種類だった。
当時はコリドラスに強い小売店に「特別な伝手」が無ければ入手出来ないとまで言われるほど、滅多にお目に掛かれない珍品だったのだ。
不思議なのは、初輸入から50年近くが経過しているのに今でも流通量が少ない事だろうか。
生息地も輸送ルートも確立しているはずなのに、何故、この程度しか輸入量が増えないのかは謎だ。



こんな個体も掲載されていた。
アクアライフ1982年1月号-4
アルクアタスの個体変異として紹介されているが、この個体も入手は極めて困難だったはずだ。
ペルー便のアルクアタスに混じっていたとも噂されていたけれど、真相は不明である。



一方、こんな例もある。
アクアライフ1982年1月号-6
当時、最新着だったこの個体群はハラルドシュルツィとされていた。
説明を見ると「本種とステルバイの見分けは難しいが、後者ではスポットがライン状につながるという」と記されている。
まだ、記載論文の孫引きから「絵合わせ」をしていた時代だから、この様な間違いもやむを得ない事だった。



この個体はシュワルツィの老成魚とされているが、どう見られるだろうか。
アクアライフ1982年1月号-8
これ、いわゆるスーパーシュワルツィではないだろうか。
もしそうだとすると、スーパーシュワルツィは本特集号が発売された1981年12月までには輸入されていた事になる。



本日の最後に、こんな画像を。
アクアライフ1982年1月号-3
ウチダ熱帯魚、小林熱帯魚、わらび熱帯魚、妙蓮寺水族館など、コリドラスを集め始めた初期に通ったお店たち。
今では閉店してしまったこれらのお店で、コリドラスの飼い方を教わった人は多いのではないだろうか。
改めて感謝の意を表したい。



アクアライフ初のコリドラス特集号は如何だっただろうか。
分類に関しての間違いなど、粗を探せばキリがないかもしれない。
しかし、インターネットが普及する前、洋書の入手も難しかった時代に、少ない情報をかき集めていた関係者の情熱は伝わったのではないだろうか。

同時に、グループを代表する人気魚、新着魚の影響が如何に大きいかを物語っていると思うのは私だけだろうか。

コリドラスが広く認知されるきっかけを作ったバルバータス。
そのバルバータスが、スクレロミスタックス属という別属に変更されたのは、何とも皮肉な結末だと思うのだ。



次回、コリドラスの近代史(3) アクアライフ1984年8月号「特集 CORYDORAS」。
僅か2年の間に、すっかりポピュラーになったコリドラスの世界に驚愕する。



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プロフィール

ざうらー

Author:ざうらー
コリドラスに取り憑かれて41年。
この間、ずーとコリドラスと一緒。
生まれ変わったらコリドラスになりたい・・・とか。

①2020年1月1日
カテゴリーの整理を行いました。

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